放線冠梗塞(脳梗塞)の患者さんを担当させてもらった経過と感想。リハビリ難しい。その①
こんばんは!
健康オタクの理学療法士です!
今回は、【脳梗塞(放線冠梗塞にて左片麻痺)の患者さんを半年間担当として持たせてもらい感じたこと】を書かせていただきたいと思います!
自分自身が行なったアプローチなど、少しでも病院で(特に快復期で)働かれているセラピストのご参考になればと思います。
よろしくお願いします!
放線冠梗塞、放線冠の位置
放線冠といっても、様々な症状が出ることが研究から分かっていて、典型的な症状が出るとは限らないみたいです。(全てそうか。笑)
基本的には対側の運動麻痺が主症状と言われていますね。
放線冠の位置としては、
中脳の大脳脚を出る→脳に向かって内包後脚へ行く。
なので、末梢へ向かう運動ニューロンの繊維です。
この際の中間地点のまとまった繊維のことを指します。
画像で言うところの、ここです。
放線冠梗塞Aさんの症例情報
70代男性。
主な症状としては、
・重度の片麻痺(弛緩性麻痺)
です。
病前から外出はよくされておりスポーツジムなどにも行っていた。
趣味をお聞きすると「特にない」とおっしゃる。
しかし会話したり観察していると、【近くの公園で散歩などしていた。性格としてはお話好きで頑固。恥ずかしがり屋な一面】もあり。
介入中や病棟生活の中ではマイナス発言がとても多く(左脚が右足と同じように動かないんだよ!しっかり立つって何だよ、傾いてるじゃねえか!等)、こちらからの正のフィードバックも通りにくい印象であった。
ワーキングメモリーの低下もあり運動学習が進みにくい可能性も考えた。
Aさんの入院時状況
入院された時は発症して1ヶ月ほど経った時でした。
認知機能は会話している限り保たれている印象でしたが、舌の動きは悪い様。
しかし病前から滑舌は悪かったという情報もあり、STさん(言語聴覚士)と要相談。
運動機能の方が低下が激しいため、P.OT中心での介入で開始。
【脳の機能的再構築は3ヶ月ほどで90%以上は行われてしまう。】ということを知っていたので、できるだけ早めの抗重力的活動を促して行こうと考えました。
放線冠梗塞の脳画像
画像自体は個人情報のため載せられませんので、絵に描かせていただきました(下手ですがご愛嬌ということにしてください笑)
※放線冠の見える側脳室天井レベルでのMRI
これを見ると、内側に強い梗塞があり、顔面や上肢レベルよりかは下肢や体幹レベルでの運動麻痺が強いのではないかとの予測が立てられます。
他の皮質レベルや中脳レベルでは大きな損傷は見られませんでした。
なので、意欲の低下などは、
【病態の受容期がまだでショック期である可能性も考えると同時に、病前からの性格もあるかもしれない】
と考え、ご家族様にお聞きしつつ評価していこうと考えました。
ゴールの設定
・自宅の廊下の幅が狭い(直線で車椅子を通る幅は基本的にはですが、最低90cmほど欲しいと言われています。その幅はありませんでした。)
・家族さんの歩いて欲しいという強い希望。
・奥さんなど同居している家族様の介助量(マンパワー)に大きな期待が出来なさそうなこと
更に脳画像の程度も考えた結果、最初のファイナルゴール設定は、、、
【1本杖での自宅内歩行自立、トイレ動作の修正自立】
を目標に介入していきました!
目標というのは介入していくにつれて変化していくものですし、そんなに完璧に最初から目標を決め込まなくても良いのではないかと私は思います!
理学療法評価と問題点
機能的には、
・上下肢全体の弛緩性麻痺
・随意性の低下(麻痺による。Brn.s1でレベル)
・FBS 0点
・MMSE25点
・消極的であり自身の体に自信が持てないこと。(病前性格もあるとは思います)
・動作手順の理解能力低下(ワーキングメモリーの低下)
・情報処理能力の低下。
・二木の分類では、【ベッド周りでの生活も自立していない】ので、退院時も自立歩行は困難なのではないかという評価結果に。。。
理学療法アプローチ(開始1ヶ月頃まで)
・麻痺の程度が上下肢ともに弛緩性麻痺であったため、【長下肢装具を使用しての立位・歩行訓練】を行いました。
・LLBを使用しての介入
○正中位を取り、鏡や声かけ、体重移動を行う中でフィードバックを行なった。
膝は完全伸展位から始め、支持性を確認しつつ軽度屈曲位まで持っていった。
正中位、股関節伸展位で荷重を行うことにより大腰筋をストレッチさせ筋活動を促すことが可能です!
大腰筋は【股関節と体幹を繋ぐ唯一の筋】なので、これが安定すると立位・座位の安定性が向上しやすいと言われております(o^^o)
○LLBでの介助歩行を「1.2.1.2」とリズミカルに声をかけつつ反復。
CPGの賦活と自由度の効いている股関節~体幹筋の筋活動を促していった。
※収縮期の血圧が150~180ほどになることがあったため、全身状態を見つつ介入。
Dr指示は特になかったため、負荷はある程度調節はしたが、中止になるほどではなかった。
・全体的な運動学習面
まだ歩行を行ってからの期間は短いため、運動学習の初期層と考え、
◯フィードバックは多めに
◯休息はこまめに
◯頻度は多めに(運動学習でいう「分散法」)
で介入を行いました!
・ワーキングメモリーの低下からの影響もあるのか、意欲の低下も著しく自主トレを行っていただけるような状況ではなかった。
必要性は何度も促したが、リハビリ時以外での活動はあまり望めなかった。
・ご家族さんの力も借りたり趣味活動に繋げたような会話もしてみたものの、Aさんは「右足みたいに左足が動かないんだよ!」と病前レベルとずっと比較してしまう。
※なお、この方は半側空間無視(以下、USN)などは無かったためミラーセラピーのような鏡使用を行いましたが、USNがある方には鏡は混乱を招くとも言われていますので。
本症例では無かったですが、気になる方はご確認をしてくださいね。
LLBの適応というか、継続期間の選定がとても難しかったです。
【1ヶ月ほどで介助歩行を学習してきてしまい、筋活動が得られなくなる。】と言う文献もありましたので、短下肢装具へのカットダウン時期はとても悩みました(o_o)
この患者さんの初期の段階から、リハビリ開始して間もない頃のお話をこの記事ではさせていただきました!
続きもまた後日に書きます!